好きになる瞬間は突然やってくる
60代の私は、長い間「恋愛はもう自分には関係のないもの」と思っていました。40代で離婚を経験して以来、一人暮らしを続けてきたからです。
自由ではあるものの、孤独も確かにある。日常は仕事と趣味、時折の飲み仲間で埋めてきましたが、胸の奥に「もう誰かを好きになることはない」というあきらめのような気持ちを抱えていました。
けれど、好きになる瞬間というのは本当に不意に訪れます。何気ない日常の中で、心がふっと震える。その小さな揺らぎが、後に大きな想いへと育っていくのです。
私が人を好きになった決定的なきっかけ
私にとってのきっかけは、趣味の写真サークルでした。そこに参加していた一人の女性。年齢は私より少し下で、控えめだけれど笑顔が柔らかい人でした。最初は挨拶を交わす程度で、特に意識することもなかった。
ある日、数人で遠出して風景を撮影した帰り道、私のカメラを彼女が手に取って、レンズを布でそっと拭ってくれました。
「尚樹さんって、道具を大事にされるんですね」
彼女の何気ない一言に、心臓が大きく脈打ったのを覚えています。誰も気づかないような小さなこだわりを、彼女はちゃんと見てくれていた。胸の奥が熱くなり、そこから彼女への意識は変わっていったのです。

男が感じる“好き”のサイン
その日以来、私は彼女のことを考える時間が増えました。サークルの予定表を見て「次はいつ会えるだろう」と自然にチェックしてしまう。メールの通知音が鳴るたびに期待してしまう。
そして何より、会えない時間に「彼女は今、何をしているだろう」と思いを馳せるようになった。
若い頃のような激しい恋ではない。けれど、静かで確かな温かさを伴った感情。彼女の笑顔を思い浮かべるだけで、心が満たされる。60代の私にとって、それは驚くほど新鮮な体験でした。
好きになった後に訪れる迷い
しかし同時に、迷いも押し寄せてきます。
「60代の男が、今さら恋を口にしていいのか」
「彼女にとって私はただの仲間にすぎないのではないか」
そう考えると、どうしても気持ちを伝える勇気が出ませんでした。
一緒に出かけたとき、彼女の横顔を見ながら「このまま気持ちを言えずに終わってしまうのか」と心の中で何度も自問しました。けれど、言葉にはならない。年齢や立場を意識するたびに、自分で自分にブレーキをかけてしまったのです。
好きになることで得たもの
恋は結局、実らなかった。けれど、彼女に出会い、人を好きになったことで私の生活は確かに変わりました。
鏡を見て髪型を整えたり、散歩で体力を落とさないようにしたり。ファッション雑誌を久々に開いてみたりもしました。
人を想う気持ちは、放っておけば錆びてしまう心を再び動かしてくれる。自分はまだ恋をする力を持っている――そう実感できただけでも、彼女への想いは私にとって大切な出来事だったのです。
振り返って分かった“男が恋をする理由”:
年齢を重ねると「理屈」で物事を判断しがちになります。恋愛なんて若者のものだ、自分にはもう関係ないと頭で片づけてしまう。
でも実際には、男が人を好きになる瞬間は年齢に関係なく訪れる。理屈ではなく、心が自然に動いてしまうのです。
そしてその感情は、人生に彩りを与え、日々に張りをもたらしてくれます。
もし、あなたが「もう恋なんて関係ない」と思っているなら、ぜひ自分の心に正直になってみてほしい。まだまだ恋は訪れますし、そのときに「自分も動いてみよう」と思えるかどうかで、人生は大きく変わるはずです。
私自身、彼女への想いは伝えられなかったけれど、その経験が「次は一歩を踏み出そう」という気持ちを残してくれました。
同じように迷う60代の男性へ――勇気を出して、もう一度出会いの場に身を置いてみませんか。